仕事をしながら大学に通うには?

会社員をしながら大学や大学院で学びたいという方はとても多いです。

ただ「仕事と勉強が両立できそうにない」「仕事を辞めなければならないから無理だろう」などの理由で二の足を踏んで、結局「いつかは大学に行けたらいいなあ」というぼんやりとした願望が心のどこかに引っかかっているという方が大半のように思います。

それでは、実際に仕事をしながら大学や大学院で学問をすることは現実的な選択肢なのでしょうか?

この問いに対する回答は「進みたい大学や専攻による」というものです。一概に言えません。

例えば私は大学と大学院で人文社会系の学問領域の勉強・研究をしました。具体的に言うと、主に12世紀頃の中国における儒学(朱子学・陽明学など)が研究テーマでした。この自分の経験に限って言うと、「会社と大学の両立は無理」です。

何故かというと、昔からあるオーソドックスな学問領域というのは「社会人に対応」することをあまり念頭に置いていません。具体的に言うと、授業がウィークデーの日中(つまり、社会人が働いている時間帯)にあったのでどう考えても会社員をしながら何年も研究することは不可能でした。ですから会社を辞めて大学・大学院での学問に専念しました。

また、これは早稲田の学生時代に経験したことです。
大学3年の時、大学編入説明会というのがありました。その時私の所属していた研究室に、「社会人をやっているけれど早大に編入して学びたい」という方が来られました。「社会人をやりながら大学の授業をどうやって両立するのですか?」と教授に訊かれて、この方は「有給休暇を使って何とかしようと思っています」と答えました。

これに対して教授が「年間数十日の有給では、無理でしょう。たとえばこの人(私の事)は、会社を辞めてうちの研究室に来ましたよ」と言ったところ、この社会人は「ええっ!?」と心底驚いたという感じのリアクションをしていました。
私からしたら「授業が月~金の朝9時から夜6時にしかないのに、年間数十日しかない有給を使ってなんとかなる」と思っている時点で無理なのではないかと思いました。ちなみにこの話を、私と同様、仕事を辞めてから大学院に入ってきた方にしたら「いや、無理無理。甘いなあ・・・」とつぶやいていました。

しかし、私が東大院を修了した際に総代を務めるくらい優秀だった方は、博報堂に社員として勤務しながら大学院で学んで修了された方だったそうです。
なぜ私には無理だったことがこの方には両立が可能だったのかというと、優秀さの違いも確かにあると思いますが、それ以前に、大学院の専門が異なるからです。

東大の中にも「社会人経験者を意識した入試形式とカリキュラム」の大学院というのがあるので、恐らくそういった大学院で学ばれた方だと思います。(伝聞形式になってしまうのは、私が事情により卒業式に出られなかったため、後から人づてに聞いたからです。しかしこの話を聞いた時に思ったのは「多忙な広告業界で仕事しながら大学院修了とはすごい人もいるものだ。ただ、社会人学生に対応している大学院の修了生なのだろうなあ。でないと授業の時間割的に無理だものな」ということでした)

ですので最初の問いの

実際に仕事をしながら大学や大学院で学問をすることは現実的な選択肢なのでしょうか?

に対する回答は

何を専攻するかによる。仕事をしながら学問が両立できるかは、スタートの時点で授業の時間割を確認しなければならない(昔ながらのオーソドックスな学問領域の場合は、不可能である可能性が高い。しかし、社会人学生を念頭に置いて夜間に授業を展開しているなら十分可能)。

になります。しかし実はこれも、その人・状況によって異なる場合があります・・・。

なぜなら、私の知人で学校の教師をしながらいわゆるオーソドックスな学問領域を大学で学びなおして、別の科目の教員免許を取得した方や、SE(システムエンジニア)の仕事をしながら大学に4年間通って修了した方がいるからです。この人たちになぜそんなことができたのか?と質問したところ、異口同音に

「職場に恵まれた。上司が理解がある人だったので、相談して大学に行けるような勤務形態にしてもらった」と言っていました。

周りの人に協力してもらえる環境を作れるか
会社や上司にこういう交渉ができるかどうか
YESと言ってもらえる信頼関係・人間関係を日頃から構築しているか
自分の熱意で両立するために融通を利かせてもらうことを承諾してもらえるか

こうした「交渉力」「説得力」というのは、社会人が「仕事をしながら大学に行く」という選択をする際に非常に重要なスキルだと思います。